市況動向

銅事情 10月号

2023年10月10日 資材委員会提供

<9月の国内事情>

 日銀が四半期毎に発表している最新の全国企業短期経済観測調査(短観)では、大企業・製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)はプラス9で前回6月調査から4ポイント改善した。製造業の内訳としては、素材業種が6ポイント改善し、上昇幅が大きい。とりわけ木材・木製品が21ポイント、石油・石炭製品が20ポイント、窯業・土石製品が18ポイントという大きな改善が示された。加工業種も2ポイントの改善だが、半導体不足が概ね解消したことによる、挽回生産が進んでいるとみられる自動車が10ポイントの上昇し、コスト増を販売価格に転嫁する動きが広がり、収益環境が改善した食料品も10ポイントの上昇したことが業況判断DIを押し上げた一方では、中国を中心とした海外経済の停滞が、汎用機械を7ポイント下落、生産用機械を6ポイント下落、電気機械を4ポイント下落させ、業況判断DIを押し下げた。電気機械では半導体需要の低迷も低下要因として働いたとみられている。大企業・非製造業では、電気・ガスの業況判断DIがプラス22で前回比36ポイントという大幅な上昇となった。加えて訪日外国人の増加や国内での人流の活性化の影響を受け、宿泊・飲食サービスも8ポイント、小売が7ポイント上昇した。また、対事業所サービス6ポイント、卸売4ポイントも上昇し、業況判断DIを押し上げた。逆に対個人サービスは投入コストの増加が環境を悪化させ4ポイント下落している。各々の先行きについては、大企業・製造業がプラス10で今回差が1ポイントのプラスとなっている一方で、大企業・非製造業はプラス21で今回差が6ポイント悪化していることから、非製造業の先行きへの警戒感が強まっている。
 23年度の想定為替レートは1ドル=135円75銭と、前回の132円42銭からさらに円安が進行すると見込んだ。23年度の全規模・全産業の設備投資計画は13.0%であった。グリーン化・デジタル化対応のための設備投資意欲が高まっているとみられる。
 企業の仕入価格判断DIや販売価格判断DIを見てみると、仕入価格判断では大企業・製造業がプラス48で前回から4ポイント下落。大企業・非製造業がプラス42で前回から1ポイント下落となり、いずれも低下が見込まれている。販売価格判断DIは大企業・製造業がプラス32ポイントで前回から2ポイント下落、大企業・非製造業ではプラス27ポイントで前回から1ポイント下落となった。販売価格判断DIと仕入価格判断DIの差(交易条件)は、大企業・製造業では改善した一方で、大企業・非製造業では横ばい。製造業を中心に急速なコスト増を価格転嫁する動きが足元で進んでいることが確認されるが、非製造業では価格転嫁が一巡していると言える。先行きは製造業、非製造業ともに横ばいを見込んでおり、価格転嫁の動きが一巡することが示唆されている。
 人手不足感は強まっている。雇用人員判断DIでは大企業・製造業がマイナス15ポイントで前回から2ポイント下落、大企業非製造業もマイナス36ポイントで前回から2ポイント下落しており、経済活動の正常化に伴い、労働需要が緩やかに増加、雇用の不足感が一段と強まっている。とりわけ中小企業はDIの低下幅が大きくなっている。

<銅事情>

 9月の銅価格は、前月末対比約130ドルの下落。初日こそ、前月末対比+150ドルの8,500ドル台となったが、その後は、FOMC(連邦公開市場委員会)の高金利政策の維持姿勢により、米ドルが引き続き強い事や、中国の8月銅輸入の前年比5%減少やLME在庫の増加など、世界経済の減速に伴う需要減の懸念などから弱含み、8,000ドル付近まで下落した。月末2日間で値を戻したが、9月末のLME銅価格は8,231ドル、9月平均のLME銅価格は8,271ドルとなった。
 9月のLME銅在庫量は、右肩上がりで増加し、前月末対比で62.4%の大幅増加となった。初日、8月末同様100,000トン台となった後、翌週に27,000トン増加し130,000トン台、翌週は13,000トン増加し140,000トン台、翌週は16,000トン増加し160,000トン台、最終週は5,000トン増加し、9月末のLME銅在庫量は、169,300トンとなった。
 9月の国内銅建値は、8月末からプラス1万円の128万円/トンでスタートし、6日にプラス2万円の130万円/トン、8日にマイナス2万円の128万円/トン、14日にプラス1万円の129万円/トン、20日にマイナス2万円の127万円/トン、26日にマイナス1万円の126万円/トンとなり、9月平均の銅建値は、127.8万円/トンだった。
 直近6か月の平均銅建値は、2023年 4月:123.5万円/t 5月:118.2万円/t 6月:124.0万円/t 7月:124.7万円/t 8月:126.6万円/t 9月:127.8万円/t。
 2023年10月の国内銅建値は、9月末から2万円/トン上げの128万円/トンでスタート。



過去の銅事情