銅事情 2月号
2025年02月10日 資材委員会提供
<1月の国内事情>
日銀は1月24日の金融政策決定会合で、昨年7月以来となる政策金利の追加利上げを8対1の賛成多数で決めた。銀行間で短期資金のやり取りする金利(無担保コール翌日物)の誘導目標を0.25%から0.5%程度に引き上げる。前回(昨年7月)に利上げを決めた際には、米雇用統計の弱さなども併せて、8月上旬に株価が一時急落、市場が混乱した感があり、今回は事前に利上げ観測を高める発言をしつつ実施された。日銀は追加の利上げを判断する上で、賃上げに向けた動きとアメリカの政権の影響を見極めるとしていた。賃上げについては、「今年の春闘において去年に続きしっかりとした賃上げ実施する」といった声が多く聞かれていたことと、トランプ政権の影響については、いまのところ金融市場に大きな混乱はなく、当面は経済や物価情勢の改善傾向が続くと判断したとみられる。政策金利が0.5%の水準となるのは、2007年2月~08年10月以来で17年ぶり。公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、現在の実質金利が極めて低い水準にあるとの認識を示し、今回示した経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになるとした。経済の先行きの展望は、前回10月のレポートから概ね不変で、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられるとしている。上振れないし下振れの可能性(リスク要因)としては「海外の経済・物価情勢と国際金融資本市場の動向」と「資源・穀物価格を中心とした輸入物価の動向」と「わが国を巡る様々な環境変化 が企業や家計の中長期的な成長期待や潜在成長率に与える影響」の3つを上げた。
物価の先行き関して、2024年度から2026年度の消費者物価指数(生鮮食品を除く=コアCPI)の前年度対比の上昇率見通しを公表した。2024年度と2025年度が、米の価格上昇に加え、このところの円安等に伴う輸入物価の上振れもあって、前回10月時点での見通しから上振れており、2024年度が+2.7%(前回+2.5%)、2025年度が+2.4%(前回1.9%)を見通した。2026年度も+2.0%(前回1.9%)で見通し期間後半には2%の物価安定目標と概ね整合的な水準で推移するとの見方を示した。物価のリスク要因としては、先に上げた経済のリスク要因が顕在化すると物価にも影響が及ぶと考えられるほかに、物価固有のリスク要因として、以下の2つに注意が必要である。第1に、企業の賃金・価格設定行動である。企業の賃金・価格設定行動は従来よりも積極化しており、中心的な見通しでは賃金と物価の好循環が引き続き強まっていくことを想定している。もっとも中小企業を中心に賃金上昇の価格転嫁は容易ではないとの声も引き続き聞かれており、今後、輸入物価からの価格転嫁の影響が減衰していくもとで、賃金上昇分を含め、コストの販売価格への転嫁の動きが弱まることがないか注視していく必要が有る。影響が減衰していくもとで、賃金上昇分を含め販売価格への転嫁の動きが弱まることがないかも注視していく必要がある。一方、販売価格に賃金を反映する動きが想定以上に強まったり、先行き労働需給が引き締まった状況が続くとの見方が強まるもとで、賃金の上昇圧力が強まっていく可能性がある。こうしたもとで、中長期の予想物価上昇率の高まりを伴いつつ、賃金・物価とも上振れていくことも考えられる。第2に、今後の為替相場の変動や国際商品市況の動向、およびその輸入物価や国内価格への波及は、上振れ・下振れ双方の要因となる。世界経済の先行き等を巡る不確実性は高く、これが国際商品市況を大きく変動させる可能性がある。また、このところ、企業の賃金・価格設定行動が積極化するもとで、過去と比べると、為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている面がある。
金融政策運営について、以上の経済・物価情勢について2%の「物価安定の目標」のもとで、2つの「柱」による点検を行い、先行きの金融政策運営の考え方を整理する。第1の柱である中心的な見通しについて点検すると、消費者物価の前年比は、2024年度に2%台後半、2025年度に2%台半ばとなったあと、2026年度は概ね2%程度となるとと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。第2の柱は、金融政策運営の観点から重視すべきリスクについて点検する。経済・物価を巡る不確実性は上下双方向で引き続き高く、金融・為替市場の動向やそれによる経済・物価への影響にも、十分注視する必要がある。リスクバランスは、経済の見通しについては概ね上下にバランスしている。物価の見通しについては、2024年度と2025年度は上振れリスクの方が大きい。先行きの経済・物価・金融情勢次第であるが、現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、以上のような経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて引続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えている。そのうえで、米国をはじめとする海外経済の今後の展開や金融資本市場の動向を十分注視し、経済・物価の見通しやリスク、見通しが実現する確度に及ぼす影響を見極めていく必要がある。日銀は2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していくとした。
<銅事情>
1月の銅価格は、24日までは上昇基調で、前月末の8,700ドル強から、9,200ドル強まで上昇したが、その後は下落基調となり、9,000ドル割れで終わった。米国への輸入品の関税導入について、範囲を限定することが検討されているとの米ワシントン・ポストの報道や、米12月の小売売上高が市場予想を下回り、インフレ再燃への警戒感が後退した事でドルが軟調となり、銅価は上昇した。しかし、中国の経済指標を受けて景気への懸念が強まった他、トランプ米大統領が鉄鋼、銅、アルミニウム製品に関税を賦課する方針を示したことで、世界的な需要を損なうリスクが意識され、27日以降は下落基調となった。1月末のLME銅価格は8,950ドル、1月平均のLME銅価格は、8,978ドルとなった。1月のLME銅在庫量は、徐々に減少。全ての週で減少し、月間では16,225トンの減少となった。1月末のLME銅在庫量は、255,125トンで、前月末対比マイナス6.0%となった。
1月の国内銅建値は、12月末からマイナス1万円の143万円/トンでスタートし、8日にプラス2万円の145万円/トン、10日にプラス2万円の147万円/トン、22日にプラス1万円の148万円/トン、28日にマイナス4万円の144万円/トンとなり、1月平均の銅建値は、145.9万円/トンだった。
直近6か月の平均銅建値は、2024年 8月:136.5万円/t 9月:136.7万円/t 10月:147.8万円/t 11月:144.8万円/t 12月:141.9万円/t 2025年 1月:145.9万円/t
2025年2月の国内銅建値は、1月末同様の、144万円/トンでスタート。