市況動向

銅事情 12月号

2016年12月06日 資材委員会提供

<11月の国内事情>

 11月の国内事情は、前月からの原油先物相場や株式の好調な内容からリスク選好ムード、更に米国大統領選挙でのトランプ氏の勝利による米経済の活況予想を受け、再び円安ドル高が日本国内経済を覆う状況となった。また、銅電線出荷統計では日本電線工業会は「2016年度上期(4月から9月)の電線品種別出荷実績」を発表、銅電線の銅量で前年同期比プラスになったのは巻線と輸送用電線のみで、他の品種は数量・金額ともにマイナスとなった。特に最大出荷分野である電力用電線・ケーブルは銅量で2.9%減、金額では銅価の下落の影響から17.1%減と大幅な下落を示した。一方、同会発表「10月度部門別銅電線出荷量」では全体総量の速報値で前年同月比10.8%減の5万6,800トン(銅量)、最大需要部門である建設電販部門が前年同月比15.2%減と全体の足を引っ張ることとなった。

 

<銅事情>

 11月に入ってLME注1銅相場は、前月末の4,700ドルから中国市場の活発化を背景に再び4,800ドルを臨む推移を示すこととなった。更に11月に米国大統領選挙を控え、ヒラリークリントン氏の私的メール問題をFBIが訴追しない方針を表明したことから市場はリスク選好の動き、銅相場は上昇基調となり5,000ドルを回復した。その後米国大統領選挙はトランプ氏の優勢戦況からドルが売られる局面もあったが、同氏勝利宣言後は為替ドル、商品、株式共に予想外の高騰を迎えることとなった。銅相場は当初の上値抵抗線であった5,250ドルを上抜けすると13日連続の続伸、月末には2015年6月から1年7ヶ月ぶりの5,900ドル台とし6,000ドルを臨む局面を迎えた。為替相場も1ドルあたり104円から105円で推移していたが、トランプ氏大統領選勝利後は、大規模なインフラ整備等の財政拡張路線の期待がドル高を支援、また17日には FRBイエレン議長の「早い時期での利上げ」示唆からドル高に追い打ちをかけ約8ケ月ぶりの1ドルあたり111円から112円でのドル高推移となった。
 為替ドルと銅をはじめ商品相場は逆相関関係にありドル高が銅相場を抑えるのが一般ではあるが、今回は人民元の下落により中国企業がドル建ての銅を買う動きが出ており、銅相場と為替ドル共に堅調さを保つこととなった。
 LME在庫は、前月より下落の一途を辿っており、11月初旬の32万トンの半ばから月末には23トン台の減少となり、また10月月初から比較すると14万5千トンの減少となった。
 2016年11月の国内銅相場は、前月末の53万円/トンから1日にプラス2万円の55万円/トンとしてのスタート、その後7日にはプラス1万円の56万円/トンへ、10日にはプラス6万円の62万円/トンへ15日にプラス1万円の63万円/トンへ、更に22日にはプラス3万円の66万円/トン、月末28日にはプラス6万円の72万円/トンとした。以降は12月に入り1日には1万円マイナスの71万円/トンでスタート、6日にはプラス1万円の72万円/トンとし現在に至る。
 2016年11月平均建値は62.9万円/トンとし前月と比べ9.6万円/トンのプラスとなった。
 直近6か月の平均建値(2016年: 6月:53.4万/トン 7月:54.8万/トン 8月:52.6万/トン 9月:52.5万/トン 10月:53.3万/トン 11月:62.9万/トン )


  注1 LME:(ロンドン金属取引所 130年以上の歴史を持つ世界第一の非鉄金属市場)

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