市況動向

銅事情 9月号

2024年09月05日 資材委員会提供

<8月の国内事情>

 内閣府が8月15日に発表した2024年4~6月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比プラス0.8%となり、2四半期ぶりのプラス成長となった。年率換算では3.1%の増となる。一部自動車メーカの認証不正問題に伴う生産・出荷停止などの影響が一巡し、個人消費や設備投資が持ち直した。また、4~6月期名目GDPは物価高が継続していることを反映し、年率換算でプラス7.4%となり、金額は607兆9037億円と、初めて600兆円を超えた。足元では、賃上げの広がりや6月に開始された定額減税の効果で消費の拡大が見込まれることから、プラス成長が継続するとの見方が強くなっている一方で、実質GDPが前年同期比ではマイナス0.8%であること、前期比プラスは自動車生産の正常化が大きく起因しての反動でありサービスなどは弱いことなどを理由に、回復と言える状況にはないとの見方もある。
 GDPの過半を占める個人消費は前期比プラス1.0%で5四半期ぶりのプラス。一部自動車メーカの認証不正問題で止まっていた生産や出荷が再開し、前期からの反動で自動車の消費が回復している。個人消費の増加分の半分は自動車が占めており、自動車以外では、エアコンや携帯電話が堅調だったほか、外食や衣服向けの消費も増加に寄与した一方で、野菜や証券関連手数料など金融サービスはマイナスとなっている。もう一方の内需の柱である設備投資も前期比プラス0.9%で2四半期ぶりにプラスへ。商用車など普通乗用車向けの投資が増え、業務用コンピューターやソフトウェア投資も伸びた。民間住宅投資は前期比プラス1.6%で4四半期ぶりのプラス。貸家着工の増加が影響している。公共投資は前期比プラス4.5%。輸出は前期比プラス1.4%で自動車の出荷が増えた一方で、計算上輸出に分類されるインバウンドは前期比4.2%のマイナスであった。輸入は前期比プラス1.7%で業務用コンピューターが増えている。
 雇用者報酬は、実質で0.8%増加し11四半期ぶりにプラスに転じた。国内の総合的な物価動向を示すGDPデフレーターは前年同期比で3.0%以上の上昇となっている。
 岸田総理大臣は「安倍政権時代の2015年に掲げた600兆円という目標を9年越しで達成。33年ぶりの高水準の春闘賃上げ率や27ヶ月ぶりにプラスとなった実質賃金、史上最高水準の設備投資に加え、名目GDPの600兆円超えという数字は、賃上げと投資が牽引する成長型経済への移行を示すものだ」と述べている。尚、2015年の名目GDPは530兆円台。

<銅事情>

 8月の銅価格は、序盤に大きく下落した後は上昇トレンドとなり、前月末対比で2.2%の上昇となった。株式下落に伴いリスクオフとなり、5日に350ドル強下落し、8,600ドル台となった。その後、チリのエスコンディーダ鉱山で、労働者とBHPグループの対立解決を図る協議が妥結に至らず、世界の銅供給の5%を占める同鉱山の供給懸念が高まったとして、15日には9,000ドルを回復。その後も、中国の銅輸出が前年同月のほぼ2倍となっていること、米国の利下げ期待が株式相場を下支えする中、ダウ平均が2日連続で史上最高値を更新したことなどにより上昇トレンドとなり、8月末のLME銅価格は9,215ドル、8月平均のLME銅価格は8,964ドルとなった。
 8月のLME銅在庫量は、第1週6,200トン増、第2週44,775トン増、第3週11,950トン増、第4週9,100トン増、第5週3,475トン増となり、8月末のLME銅在庫量は、320,650トンで、前月末対比プラス30.8%となった。6月以降全ての週で増加となっている。
 8月の国内銅建値は、7月末からマイナス1万円の142万円/トンでスタートし、5日にマイナス6万円の136万円/トン、7日にマイナス4万円の132万円/トン、13日にプラス4万円の136万円/トン、19日にプラス3万円の139万円/トン、21日にマイナス3万円の136万円/トン、27日にプラス1万円の137万円/トンとなり、8月平均の銅建値は、136.5万円/トンだった。
 直近6か月の平均銅建値は、2024年 3月:134.2万円/t 4月:148.2万円/t 5月:164.4万円/t 6月:158.4万円/t 7月:154.0万円/t 8月:136.5万円/t。
 2024年9月の国内銅建値は、8月末からプラス2万円の、139万円/トンでスタート。



過去の銅事情