市況動向

銅事情 8月号

2016年8月16日 資材委員会提供

<7月の国内事情>

 内閣府発表の「景気ウォッチャー調査」によると、7月の現状判断DIは、小売関連やサービス関連での家計動向関連DI、非製造業等での企業動向関連DI、雇用関連DIのすべてが上昇したことにより、前月比3.9ポイント上昇の45.1ポイントとなった。また7月の先行き判断DIでも、それぞれのDI指数での上昇により、前月比5.6ポイント上昇の47.1ポイントとなった。なお、季節調整値でみると、現状判断DIは前月比3.3ポイント上昇の43.2ポイントとなり、先行き判断DIは前月比6.9ポイント上昇の46.6ポイントとなった。今回の調査結果に示された景気ウォッチャーの見方は、「景気は、金融資本市場が落ち着きを取り戻す中、持ち直しの兆しがみられる。先行きについては、引き続き海外経済や金融資本市場の動向等への懸念がある一方、経済対策への期待がみられる」とまとめられる。
 また、日本電線工業会6月20日発表「2016年度上期(1月〜6月)銅電線出荷量(速報値)」によると、前年同期比で4.6%減の33万4,762トンとし最大需要部門である建設電販部門での低調さが全体の足を大きく引っ張ることとなった。建設電販部門は当初想定した荷動きに至らず、下期に向けて需要の持ち直しの期待があるものの、需要に関する不透明感の観測も出てきている状況となっている。また間接輸出部門も5月、6月と連続で大きな落ち込みとなり、1万トンの大台を割り込むこととなった。

 

<銅事情>

 7月は、英国の欧州連合(EU)離脱決定後の市場混乱に一服感が出てくるとともに、世界的な金融緩和への動きや中国の経済刺激策への期待感が広がった。特に利上げ方向であったFRBが、量的緩和第4弾(QE4)の実施可能性が出てきたとの見方からリスク選好ムードとなり、7月のLME注1銅相場は、上値抵抗線(26週移動平均線)となる4,714ドルを突破し、堅調な地合いとなるも5,000ドルの壁には都度はね返され、4,850ドルから4,950ドルでの推移となった。
 一方、銅相場のネガティブ要因としては、原油の先物相場の大幅安やFOMCでの年内利上げ警戒感、更にトルコでのクーデターやミュンヘンでの銃乱射事件といった地政学的リスクが引き続き懸念材料となっている。
 LME在庫は、再び急増の局面を迎えており、前月の6月上旬に6営業日で6万トン近い急増となり、今月前半には6営業日で4万6,000トン増加の23万トン中盤の在庫量となり、5,000ドルを臨む相場の重しとなった。いずれも中国からの地金移動と見られる。
 2016年7月の国内銅相場は、前月末の53万円/トンからプラス1万円の54万円/トンでスタート、6日にマイナス1万円の53万円/トンとし、再び14日にはプラス2万円の55万円/トンへ、20日には更にプラス2万円の57万円/トンへ、一転27日にはマイナス1万円の56万円/トンとした。以降は8月に入り1日には1万円マイナスの55万円/トン、4日にはマイナス2万円の53万円/トンし現在に至る。2016年7月平均建値は54.8万円/トンとし前月と比べ1.4万円/トンのプラスとなった。
 直近6か月の平均建値(2016年: 1月:57.5万/トン 2月:57.6万/トン 3月:60.2万/トン  4月:58.1万/トン 5月:55.2万/トン  6月:53.4万/トン 7月:54.8万/トン)

  注1 LME:(ロンドン金属取引所 130年以上の歴史を持つ世界第一の非鉄金属市場)

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