市況動向

銅事情 11月号

2024年11月08日 資材委員会提供

<10月の国内事情>

 日銀は10月31日に公表した金融政策決定会合でまとめる「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」の中で、現在の実質金利が「極めて低い水準にある」との認識を示し、今回示した経済・物価の見通しが実現していくとすれば、「引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる」との考えを示した。
 先行きの経済の展望は、前回7月の展望レポートから概ね不変で、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられるとし、リスク要因としては「海外の経済・物価情勢と国際金融資本市場の動向」と「資源・穀物価格を中心とした輸入物価の動向」と「わが国を巡る様々な環境変化 が企業や家計の中長期的な成長期待や潜在成長率に与える影響」の3つを上げた。
 物価の先行き関しては、2024年度から2026年度の消費者物価指数(生鮮食品を除く=コアCPI)の前年度対比の上昇率見通しを公表した。2025年度の見通しを、このところの原油等の資源価格下落の影響が押し下げ方向で、前回の2.1%から1.9%に引き下げた。一方で2024年度は2.5%、2026年度は1.9%とし変更しなかった。物価の基調的な上昇率は徐々に高まっていくと予想。見通し期間後半には2%の物価安定目標と概ね整合的な水準で推移するとの見方を示した。
 先に上げた経済のリスク要因が顕在化すると物価にも影響を与えると考えられるほかに、物価固有のリスク要因として、以下の2つに注意が必要である。第1に、企業の賃金・価格設定行動をあげ、上下双方向での不確実性が高い。企業の賃金・価格設定行動は積極化してきているが、今後、販売価格に賃金動向を反映する動きがどの程度広がるかには、引き続き不確実性がある。中小企業を中心に賃金上昇の価格転嫁は容易ではないとの声も引き続き聞かれており、販売価格の上昇が限られる可能性もある。長期にわたり賃金・物価が上がりにくいことを前提とした慣行や考え方が社会に定着してきただけに、先行き、輸入物価からの価格転嫁の影響が減衰していくもとで、賃金上昇分を含め販売価格への転嫁の動きが弱まることがないかも注視していく必要がある。一方、販売価格に賃金を反映する動きが想定以上に強まったり、先行き労働需給が引き締まった状況が続くとの見方が強まるもとで、賃金の上昇圧力が強まっていく可能性がある。こうしたもとで、中長期の予想物価上昇率の高まりを伴いつつ、賃金・物価とも上振れていくことも考えられる。第2に、今後の為替相場の変動や国際商品市況の動向、およびその輸入物価や国内価格への波及は、上振れ・下振れ双方の要因となる。世界経済の先行き等を巡る不確実性は高く、これが国際商品市況を大きく変動させる可能性がある。また、このところ、企業の賃金・価格設定行動が積極化するもとで、過去と比べると、為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている面がある。
 金融政策運営について、以上の経済・物価情勢について2%の「物価安定の目標」のもとで、2つの「柱」による点検を行い、先行きの金融政策運営の考え方を整理する。第1の柱である中心的な見通しについて点検すると、消費者物価の前年比は、2024年度に2%台半ばとなったあと、2025年度及び2026年度は概ね2%程度で推移すると予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。第2の柱は、金融政策運営の観点から重視すべきリスクについて点検する。経済・物価を巡る不確実性は上下双方向で引き続き高く、金融・為替市場の動向やそれによる経済・物価への影響にも、十分注視する必要がある。リスクバランスは、経済の見通しについては概ね上下にバランスしている。物価の見通しについては、2025年度は上振れリスクの方が大きい。金融政策運営については、先行きの経済・物価・金融情勢次第であるが、現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、以上のような経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて引続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えている。そのうえで、米国をはじめとする海外経済の今後の展開や金融資本市場の動向を十分注視し、経済・物価の見通しやリスク、見通しが実現する確度に及ぼす影響を見極めていく必要がある。日銀は2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していくとした。

<銅事情>

 10月の銅価格は序盤、終値で9,900ドル近くまで上昇した後、下降トレンドとなり、前月末対比で3.5%の下落となった。中国景気刺激策への好感と、米労働市場の底堅さにより、2日終値で9,900ドル近くまで上昇。しかしその後は、中国政府の景気刺激策が需要にどの程度の影響を与えるかを巡る疑念から、中国の金融市場全体でセンチメントが悪化し、17日には終値で9,400ドルを割り込んだ。その後、中国人民銀行が貸出金利の指標となるローンプライムレートを引き下げると発表し、利下げ幅も予想を上回る0.25%だった事から、21日には9,600近くまで値を戻したが、米金利の上昇とドル高により打ち消された。10月末のLME銅価格は9,427ドル、10月平均のLME銅価格は9,539ドルとなった。
 10月のLME銅在庫量は、前月末同様30万トンレベルでスタートした後毎週減少。14日には29万トン割れ、22日には28万トンを割りこみ、10月末のLME銅在庫量は、271,375トンで、前月末対比マイナス9.6%となった。
 10月の国内銅建値は、9月末同様の145万円/トンでスタートし、3日にプラス6万円の151万円/トン、8日にマイナス1万円の150万円/トン、10日にマイナス3万円の147万円/トン、16日にマイナス2万円の145万円/トン、21日にプラス2万円の147万円/トン、24日にプラス1万円の148万円/トン、29日にプラス1万円の149万円/トンとなり、10月平均の銅建値は、147.8万円/トンだった。
 直近6か月の平均銅建値は、2024年 5月:164.4万円/t 6月:158.4万円/t 7月:154.0万円/t 8月:136.5万円/t 9月:136.7万円/t 10月:147.8万円/t。
 2024年11月の国内銅建値は、10月末からマイナス1万円の、148万円/トンでスタート。



過去の銅事情