市況動向

銅事情 5月号

2025年05月16日 資材委員会提供

<4月の国内事情>

 日銀は4月30日、5月1日に金融政策決定会合を開催し、「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」を公表した。トランプ関税ショックを受け、先行きをどう描くか注目されていたが、今回の会合では、利上げのシナリオは堅持しながらも、基調的な物価上昇率が2%に到達する時期を「見通し期間後半」(2025年度後半から26年度)としていた従来から、見通し期間に2027年度が入る今回の表においても「見通し期間後半」という同じ表現を用いつつ、実質的に後ずれさせた。
 実質国内総生産(GDP)の政策委員見通しの中央値は、2025年度を前回1月時点の見通しプラス1.1%からプラス0.5%に、2026年度をプラス1.0%からプラス0.7%に引き下げ、今回から公表した2027年度はプラス1.0%だった。
 経済の先行きについては、各国の通商政策等の影響を受けて海外経済が減速し、企業収益なども下押しされるもとで、「成長ペースは鈍化する」とした。設備投資は緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するなか、人手不足対応やデジタル関連の投資、成長分野・脱炭素化関連の研究開発投資、サプライチェーンの強靭化に向けた投資が継続することは見込まれるが、海外経済減速の影響を受けて伸び率が鈍化する。労働需給が引続き引き締まった状態が継続し、企業収益減少の影響を受けつつも、名目賃金は増加を続ける可能性が高い。個人消費は、当面物価上昇の影響をうけつつも雇用者所得の増加は続くことなどから「緩やかな増加基調を維持する」とみている。この間、公共投資は横ばい、政府消費は医療・介護費の趨勢的な増加を反映し、緩やかに増加していくと想定している。その後は、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、国内経済も成長率を高めていくと見込んだ。
 物価の見通しとして、消費者物価指数(生鮮食品を除く=コアCPI)の前年度対比の上昇率を2025年度がプラス2.4%からプラス2.2%に、2026年度がプラス2.0%からプラス1.7%に、それぞれ前回の公表から下方修正。今回から公表した2027年度はプラス1.9%とした。これまで上昇率を押し上げてきた既往の輸入物価上昇や米などの食料品価格上昇の影響は減衰していくと考えられ、この間、消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩むものの、その後に成長率が高まれば、人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上がっていくことから、「徐々に高まっていく」とし、見通し期間後半には「2%の物価安定目標」と概ね整合的な水準で推移するとした。物価の基調を既定する主たる要因となる、労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給ギャップは、振れを伴いつつも改善傾向をたどっており、先行きの需給ギャップは、現状程度で推移した後、見通し期間終盤にかけて再び改善していくと予想している。労働需給はマクロ的な需給ギャップ以上に引き締まっており、多くの業種で企業が労働の供給制約に直面しつつある状況から、マクロ的な需給ギャップが示唆する以上に、賃金や物価には上昇圧力がかかるとみられる。
 今回の展望リポートは、トランプ政権の関税政策を巡る不確実性が極めて高いなか作成された。日銀はリポートの脚注で、「今後、各国間の交渉が有る程度進展するほか、グローバルサプライチェーンが大きく毀損されるような状況は回避されることなどを前提に作成している」と記述し、「今後の各国の政策の帰趨や、それを受けた各国の企業・家計の対応次第で、経済・物価の見通しが大きく変化しうる点には注意が必要だ」としている。

<銅事情>

 4月の銅価格は、米トランプ大統領の関税発言により、激しい値動きとなった。米トランプ大統領が発表した関税措置を受け、世界的な景気後退懸念が高まり、銅価格は9日までに、終値ベースで、前月末から1,950ドル下落した。しかしその後、国・地域ごとに設定した相互関税について、上乗せ部分を90日間停止すると発表された他、スマートフォンやコンピューター、その他電子機器を上乗せ関税の対象から除外するとの発表から懸念が後退し、14日までに1,300ドル強値を戻した。その後は緩やかに上昇トレンドで推移したものの、中国のファンダメンタルズ悪化などから、月末に300ドル弱下落した。4月末のLME銅価格は9,204ドル、4月平均のLME銅価格は9,192ドルとなった。
 4月のLME銅在庫量は、17日までは210,000トンを挟んで一進一退だったが、休場明けの22日以降減少が続き、200,000トン割れに終わった。4月末のLME銅在庫量は、197,700トンで、前月末対比マイナス7.3%となった。
 4月の国内銅建値は、3月末からマイナス4万円の150万円/トンでスタートし、4日にマイナス9万円の141万円/トン、7日にマイナス11万円の130万円/トン、10日にプラス6万円の136万円/トン、16日にマイナス1万円の135万円/トン、23日にプラス3万円の138万円/トンとなり、4月平均の銅建値は、137.6万円/トンだった。
 直近6か月の平均銅建値は、2024年 11月:144.8万円/t 12月:141.9万円/t 2025年 1月:145.9万円/t 2月:145.6万円/t 3月:149.6万円/t 4月:137.6万円/t
 2025年5月の国内銅建値は、4月末からプラス4万円の、142万円/トンでスタート。



過去の銅事情