市況動向

銅事情 5月号

2024年05月09日 資材委員会提供

<4月の国内事情>

 日銀は4月30日に公表した金融政策決定会合でまとめる「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」の中で、2023年度の消費者物価指数(生鮮食品を除く=コアCPI)の前年度対比の上昇率と2024年度から2026年度の上昇率の見通しをそれぞれ公表した。2023年度は前回1月公表時と同じく2.8%。2024年度の見通しも2.8%で、前回の2.4%から引き上げ、2025年度及び2026年度は共に1.9%だった。2024年度から2025年度にかけては、このところの原油価格上昇の影響や政府による電力・ガス支援策といった経済対策の縮小・終了の反動が押上げに働くと見ている。この間、消費者物価の基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には2%の「物価安定目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。2024年の春季労使交渉についても「昨年を上回るしっかりとした賃上げが実現する可能性が高い。賃金の上昇を販売価格に反映する動きも強まってきている」と強調する一方で、「中小企業を中心に賃金上昇の価格転嫁は容易ではないとの声も多く聞かれている」との認識も示した。
 今回も物価固有のリスク要因として2つをあげた。第1のリスクとしては、企業の賃金・価格設定行動をあげ、上下双方向での不確実性が高い。本年の春季労使交渉では、労働需給が引き締まり、人材確保の必要性も意識されるもとで、高めの賃上げ率の実現が見込まれ、賃金に物価動向を反映する動きは強まっているが、今後、販売価格に賃金動向を反映する動きがどの程度広がるかには、引き続き不確実性がある。中小企業を中心に賃金上昇の価格転嫁は容易ではないとの声も多く聞かれ、販売価格の上昇が限られる可能性もある。日本では長期にわたり賃金・物価が上がりにくいことを前提とした慣行や考え方が社会に定着してきただけに、先行き、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰していくもとで、賃金上昇分を含め販売価格への転嫁の動きが弱まることがないかも注視していく必要性がある。一方、販売価格に賃金を反映する動きが想定以上に強まったり、労働需給の引き締まりで賃金の上昇圧力が強まっていく可能性もあるとした。こうしたもとで、中長期の予想物価上昇率の高まりを伴いつつ、賃金・物価とも上振れていくことも考えられる。第2のリスクとしては、今後の為替相場の変動や国際商品市況の動向、およびその輸入物価や国内価格への波及を上げ、こちらも上振れ・下振れ双方の要因となる。世界経済の先行き等を巡る不確実性は高く、国際商品市況を大きく変動させる可能性がある。世界的なインフレ率の動向や為替相場の変動といった点も含め、それらが物価に及ぼす影響については十分注意してみていく必要がある。
 金融政策運営について、以上の経済・物価情勢について2%の「物価安定の目標」のもとで、2つの「柱」による点検を行い、先行きの金融政策運営の考え方を整理する。第1の柱は消費者物価の中心的な見通し。第2の柱は、金融政策運営の観点から重視すべきリスクについて点検する。金融政策運営については、先行きの経済・物価・金融情勢次第であり、この点を巡る不確実性は引き続き高い。レポートで公表された経済・物価の見通しが実現し、基調的な物価上昇率が上昇していくとすれば、金融緩和度合いを調整していくことになるが、当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている。日銀は2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していくとしている。

<銅事情>

 4月の銅価格は、前月末対比で1,245ドル(プラス14.3%)の大幅上昇となった。中国政府が発表した3月度PMIが高水準となったことを受け、中国経済に関する楽観が強まった事、また、米ゴールドマンサックスが、銅価格は2025年1Qまでに、12,000ドルに到達すると強気の予測を公表した事などで、8日までに570ドル上昇し、9,300ドルとなった。その後、高値圏での調整場面はあったものの、需給ひっ迫を背景に、新規鉱山投資を促進するには銅価格の上昇が不可欠との見方が浸透し、上昇トレンドが継続した。4月末のLME銅価格は9,974ドル、4月平均のLME銅価格は9,482ドルとなった。
 4月のLME銅在庫量は、前月末対比で4.9%の増加となった。初日、前月末対比1,000トン増の約11万3千トンとなった後、8日には1万トン近く増加し、12万4千トン台となった。しかし中旬以降は小幅減少が続き、4月末のLME銅在庫量は、117,375トンとなった。
 4月の国内銅建値は、3月末からプラス1万円の138万円/トンでスタートし、3日にプラス2万円の140万円/トン、5日にプラス5万円の145万円/トン、10日にプラス1万円の146万円/トン、15日にプラス1万円の147万円/トン、16日にプラス5万円の152万円/トン、19日にプラス2万円の154万円/トン、23日にプラス2万円の156万円/トンとなり、4月平均の銅建値は、148.2万円/トンだった。
 直近6か月の平均銅建値は、2023年 11月:128.3万円/t 12月:126.7万円/t 2024年 1月:126.5万円/t 2月:129.4万円/t 3月:134.2万円/t 4月:148.2万円/t。
 2024年5月の国内銅建値は、4月末同様の156万円/トンでスタート。



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