市況動向

銅事情 8月号

2024年08月06日 資材委員会提供

<7月の国内事情>

 日銀は7月30-31日の金融政策決定会合で、政策金利の引き上げを賛成7反対2の賛成多数で決めた。無担保コール翌日物金利の誘導目標を0-0.1%程度から0.25%程度に引き上げる。利上げはマイナス金利解除を決めた3月の決定会合以来。2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現という観点から、緩和の度合いを調節することが適切だと判断。新たな市場調節方針は8月1日から実施する。
 金融政策決定会合でまとめる「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」は8月1日に公表された。その中で、先行きの経済の展望は、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられるとした。物価の先行きに関しては、2024年度から2026年度の消費者物価指数(生鮮食品を除く=コアCPI)の前年度対比の上昇率の見通しを公表。2024年度は、前回4月時点の見通しから0.3%引き下げで+2.5%、2025年度は、前回から0.2%の引き上げで+2.1%、2026年度は、前回と同じく+1.9%、という予想であった。既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰する一方、2025年度にかけては、政府による施策の反動等が前年比を押上げる方向に作用すると考えられる。この間、消費者物価の基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には2%の「物価安定目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。
 今回も物価固有のリスク要因として以下の2つに注意が必要である。第1に、企業の賃金・価格設定行動をあげ、上下双方向での不確実性が高い。企業の賃金・価格設定行動は積極化してきているが、今後、販売価格に賃金動向を反映する動きがどの程度広がるかには、引き続き不確実性がある。中小企業を中心に賃金上昇の価格転嫁は容易ではないとの声も引き続き聞かれており、販売価格の上昇が限られる可能性もある。長期にわたり賃金・物価が上がりにくいことを前提とした慣行や考え方が社会に定着してきただけに、先行き、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰していくもとで、賃金上昇分を含め販売価格への転嫁の動きが弱まることがないかも注視していく必要がある。一方、販売価格に賃金を反映する動きが想定以上に強まり、労働需給が引き締まっていくもとで、賃金の上昇圧力が強まっていく可能性がある。こうしたもとで、中長期の予想物価上昇率の高まりを伴いつつ、賃金・物価とも上振れていくことも考えられる。第2に、今後の為替相場の変動や国際商品市況の動向、およびその輸入物価や国内価格への波及は、上振れ・下振れ双方の要因となる。世界経済の先行き等を巡る不確実性は高く、これが国際商品市況を大きく変動させる可能性がある。また、このところ、企業の賃金・価格設定行動が積極化するもとで、過去と比べると、為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている面がある。
 金融政策運営について、以上の経済・物価情勢について2%の「物価安定の目標」のもとで、2つの「柱」による点検を行い、先行きの金融政策運営の考え方を整理する。第1の柱は消費者物価の中心的な見通で、2024年度に2%台半ばとなったあと、2025年度及び2026年度は概ね2%程度で推移すると予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。第2の柱は、金融政策運営の観点から重視すべきリスクについて点検する。日本の経済・物価を巡る不確実性は上下双方向で引き続き高く、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響にも、十分注視する必要がある。リスクバランスは、経済の見通しについては、2025年度は上振れリスクが、物価の見通しについては、2024年度と2025年度は上振れリスクの方が大きい。金融政策運営については、先行きの経済・物価・金融情勢次第であるが、現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、以上のような経済・物価の見通しが実現していくとすればそれに応じて引続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えている。2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく。

<銅事情>

 7月の銅価格は、2週目以降下降トレンドとなり、前月末対比で4.9%の下落となった。6月の米雇用統計で、失業率が約2年半ぶりの高水準になるなど、米FRBが利下げに動くとの観測により、1週目は300ドル強上昇し、9,800ドル台となった。2週目以降は、LME銅在庫量の増加や、中国の4-6月(第2四半期)経済成長率が予想を下回るなど、中国需要に対する懸念が意識され下降トレンドとなり、8,800ドル台まで下落した。しかし、中国PMIが弱気な内容になったことで、当局が景気刺激策を強化するとの期待が高まると、月末に200ドル程度上昇し、9,000ドルを回復した。7月末のLME銅価格は9,015ドル、7月平均のLME銅価格は9,394ドルとなった。
 7月のLME銅在庫量は、第1週11,425トン増、第2週18,850トン増、第3週24,075トン増、第4週4,700トン増、第5週6,050トン増と、前月に続き週単位で全て増加し、前月末対比プラス36.2%となった。7月末のLME銅在庫量は、245,150トンで、約3年ぶりの高水準となった。
 7月の国内銅建値は、6月末同様の157万円/トンでスタートし、4日にプラス5万円の162万円/トン、12日にマイナス4万円の158万円/トン、17日にマイナス2万円の156万円/トン、19日にマイナス6万円の150万円/トン、24日にマイナス4万円の146万円/トン、26日にマイナス3万円の143万円/トンとなり、7月平均の銅建値は、154.0万円/トンだった。
 直近6か月の平均銅建値は、2024年2月:129.4万円/t 3月:134.2万円/t 4月:148.2万円/t 5月:164.4万円/t 6月:158.4万円/t 7月:154.0万円/t。
 2024年8月の国内銅建値は、7月末からマイナス1万円の、142万円/トンでスタート。



過去の銅事情